みなさま、こんにちは。 ドイツ、ベルリン在住のフォトグラファー、Yukoです。いつもブログを読んでくださり、ありがとうございます。
本日のテーマは“「私たちが旅に出る時、猫たちは家に残る。ベルリンの『キャットシッター』文化と、ご近所さんとの鍵の交換」”です。
ドイツの人々にとって、休暇(Urlaub / ウアラウプ) は何よりも神聖なもの。 夏が来れば2週間、3週間と長いバカンスに出かけるのが当たり前ですし、そのために一年間働いていると言っても過言ではありません。
一方で、私たち海外在住日本人にとっての「長期休暇」といえば、やはり日本への一時帰国です。 フライト時間もコストもかかるため、一度帰るとなれば最低でも2週間、できれば3週間はじっくり滞在して、日本の家族や友人と過ごしたいところ。
その時、最大の心配事になるのが…そう、ベルリンの自宅で待つ、我が家の3匹の猫たちのことです。
「3週間も家を空けて、猫たちはどうするの?」 「やっぱりペットホテルに預けるべき?」
日本にいた頃は私もそう考えて悩んでいました。でも、ここベルリンには、猫にも人間にもストレスの少ない、素敵な「助け合いの文化」が根付いていたのです。
今日は、そんなドイツ流の猫のお留守番事情について綴りたいと思います。
猫は「家」につく生き物だから
まず、ドイツでは旅行の際に「ペットホテル」を利用するという選択肢はあまりメジャーではありません(もちろん施設自体は存在しますが)。
特に猫に関しては、環境の変化に非常に敏感な生き物だという認識が強く浸透しています。知らない場所に連れて行かれ、知らない匂いに囲まれてケージで過ごすよりも、**「住み慣れた自宅に残す」**のが最も猫にとって幸せだと考えられているのです。
自分の匂いがついたソファ、いつものお気に入りの窓辺、使い慣れたトイレスペース。 飼い主がいなくても、そこが「自分の縄張り」であれば、猫は驚くほど落ち着いて過ごせます。
では、肝心のご飯やトイレのお世話は誰がするのか? ここで登場するのが、ベルリン流のご近所付き合いです。
鍵を預け合う「Nachbarschaftshilfe(隣人の助け合い)」
ベルリンのアパート暮らしにおいて、信頼できる 隣人(Nachbar / ナッハバー) を見つけることは、何よりの財産だと言えます。
我が家の場合、同じアパートに住む猫好きのカップルと仲良くなり、お互いにアパートの合鍵を預け合っています。これが、いわゆる 「Nachbarschaftshilfe(ナッハバーシャフト・ヒルフェ=隣人の助け合い)」 です。
私たちが一時帰国や旅行に行く時は、彼らが毎日朝晩我が家にやってきてくれます。 ご飯をあげ(ドイツ語では動物に餌をやることを füttern / フュッターン と言います)、トイレを掃除し、そしてしばらく猫じゃらしで遊んだり、ソファで撫でてくれたり。
そして逆に彼らがバカンスに行く時は、私が喜んで彼らの家の猫ちゃんのシッターを務めます。
「困った時はお互い様」
そこにお金のやり取りは一切ありません。 旅先で見つけた美味しいワインや、日本から持ち帰った抹茶のお菓子をお土産に渡し、感謝を伝え合う。 このシンプルで温かい関係が、大都会であるベルリンで成立していることに、移住当初はとても感動しました。
また、この助け合いに救われたのは旅行の時だけではありません。 私が出産のために数日間入院しなければならなかった時も、彼らは二つ返事で猫たちのお世話を引き受けてくれました。夫も病院と家を行き来する忙しい日々だったので、「猫のことは任せて、赤ちゃんに集中して!」という隣人の言葉にどれほど救われたか分かりません。
プロに頼むなら「Cat in a Flat」
もちろん、頼める隣人がいない場合や、投薬が必要などより専門的なケアが必要な場合は、プロのシッターさんにお願いすることもあります。
ヨーロッパで広く使われているのが、「Cat in a Flat」 というシッターのマッチングアプリです。これが本当に便利で、よくできています。
このサービスの素晴らしい点は以下の通り。
- 自宅に来てくれる: 猫は移動のストレスゼロ。
- 写真付きレポート: 「今日はこんなに遊びました!」「ご飯完食しました」と、毎日写真や動画付きでレポートが届く。
- プラスアルファのケア: 郵便物の回収や、観葉植物の水やりもついでにお願いできる。
私も実際に利用してみましたが、来てくれたシッターさんは本当に猫への愛が深い方でした。遊ぶだけでなく、ブラッシングなどのケアも丁寧にしてくれたようで、帰宅した時にはむしろ私たちがいる時より毛並みが良くなっていたほど(笑)。猫たちがリラックスして留守番できていたことに、心から安心しました。
安心のために交わした「4つの書類」
アプリ経由とはいえ、大切な家族と自宅の鍵を預けるわけですから、私たちはシッターさんと直接面談し、以下の4つの書類を用意して契約を結びました。
- 契約書(Vertrag) 期間や料金はもちろん、「万が一病気になった時の対応」や「免責事項」までしっかり明記し、お互いにサインをしました。口約束だけでなく書面に残すことで、お互いの責任感が生まれます。
- お世話リスト(Care Sheet) ご飯のグラム数、トイレの掃除手順、おやつの保管場所、ブラッシングの頻度などを細かく記載。さらに「ここを撫でると喜ぶ」「この音には怯える」といった性格や、かかりつけの動物病院の連絡先もまとめました。
- 鍵の受け渡し証(Schlüsselübergabeprotokoll) 「いつ」「誰が」「鍵を何本」預かり、いつ返却したかを記録するシートです。鍵の紛失トラブルは一番避けたいので、受け渡し時に必ずサインをもらいます。
- 振込先口座情報シート シッター料金の支払先や、万が一緊急で病院にかかった場合や消耗品を買い足してもらった際の費用精算がスムーズに行えるよう、口座情報を明記したシートを交換しました。
ここまでやると「少し堅苦しいかな?」とも思いましたが、シッターさんはむしろ「情報がまとまっていて、プロとして動きやすい!」と喜んでくれました。曖昧さをなくすことが、お互いの安心に繋がるのだと実感しました。
3週間の留守、猫たちの反応は?
以前、日本への一時帰国のために3週間ほど家を空けた時のことです。 隣人とシッターさんの見事な連携プレーのおかげで、猫たちは何不自由なく過ごしてくれていたようでした。
ただ、帰宅した瞬間だけは…。
長いフライトを終えてヘトヘトになりながら、石畳の上をガラガラとスーツケースを引いて玄関を開けると、その音にびっくりしたのか、猫たちの姿が見当たりません。 どうやら、久しぶりの大きな音と気配に驚いて、ベッドの下やソファの裏に隠れてしまったようです。
「ただいまー、帰ったよー」
優しく声をかけながら荷解きをしようとスーツケースを広げると、ソロリ、ソロリとどこからともなく3匹が登場。 そして次の瞬間には、空になったスーツケースの中に代わる代わる入り込み、すっかりくつろぎモードに(笑)。
「お土産より、この箱(スーツケース)がいいニャ」と言わんばかりの彼らを見て、ようやく旅の緊張が解けました。 彼らの温かさを感じながら、「家」を守ってくれていた猫たちと、それを支えてくれたベルリンの人々に感謝し、久しぶりの我が家の空気を噛み締めた夜でした。
今日のドイツ語
- der Urlaub(休暇、バカンス)
- der Katzensitter(キャットシッター)
- füttern(餌をやる)
まとめ
ベルリンのペットシッター文化。 それは単なる便利な「サービスの利用」ではなく、「信頼の交換」 によって成り立っているように感じます。
自分が誰かを助けるから、自分も誰かに助けてもらえる。 そんな循環が、猫との暮らしをより豊かで安心できるものにしてくれています。
もしこれからベルリンで猫と暮らす予定の方がいれば、まずはアパートの中庭ですれ違う隣人に、笑顔で「Hallo!」と挨拶することから始めてみてください。 そこから、素敵な助け合いの輪が広がるかもしれません。
それでは、また次回のブログでお会いしましょう。 Yuko.N.Sでした。
【Photo by Yuko N.S / ANB Studio】
ベルリンでフォトグラファーとして活動しています。 ポートレート、家族写真、商品の物撮りなど、「光」を大切にした写真撮影を行っています。自宅スタジオ完備。「こんな写真は撮れる?」といったご相談も大歓迎です。日本語で安心できる撮影をお届けします。 お問い合わせはこちらから。
